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パニック症とトラウマ②

【パニック症とトラウマの関係】

・安心安全を感じることが難しい。何時も孤立を感じる。

・やりすぎてしまう事が常態化。

 トラウマを抱えている方に共通して見られる傾向の一つに、「安心・安全」を感じることが難しいという特徴があります。子ども時代に育った環境や、成長過程で体験したさまざまな出来事の中で、「家族や、大人や、仲間から守られていた」「大丈夫だと信じられる誰かがそばにいた」と感じられる体験が少ないと、人は慢性的な緊張状態にさらされ続けることになります。すると、体はリラックスするタイミングを失い、自律神経が常に警戒モードになってしまいます。パニック症は、こうした慢性的な過覚醒の土壌の上に、ある日突然、表出することがあるのです。

 また、トラウマのある方の中には、「頑張りすぎてしまう」「人に頼れない」「常に自分が何とかしなければ」と無意識に自分を追い込み続けてしまう傾向も見られます。これは、過去に自分のニーズを表現しても受け止めてもらえなかった体験や、助けを求めたのに裏切られた経験が影響していることが多いです。そのため、人に頼るよりも、自分が過剰に努力して状況を何とかしようとする方が、むしろ「安全」に感じられてしまうのです。しかし、この「やりすぎる」スタイルは、心と体の疲弊を積み重ね、限界を超えたときにパニック発作というかたちで現れてくることがあります。

 トラウマに由来するこうした生きづらさは、本人にとってはごく自然な“適応”の結果であるため、自分ではなかなか気づきにくいものです。しかし、心理療法の中でトラウマへの理解が深まり、自分がどのように生き延びてきたかに気づくことができると、それまで無意識に選んでいた“やりすぎる”生き方に、少しずつ変化をもたらすことができます。

【ホログラフィートークではどのように治療をするか】

 ホログラフィートークでは、こうした「やりすぎる」「緊張が抜けない」「常に不安がある」といった症状を、その人の神経系に刻まれたトラウマ記憶として扱います。そして、それは頭で思い出せる記憶に限らず、身体や感覚に埋め込まれた「身体記憶」として存在していることが多く、本人はなぜそんなに疲れてしまうのか、自分でも説明がつかないまま日々を過ごしていることがあります。

 セッションの中では、クライエントの内側に自然に湧いてくる感覚やイメージ、言葉にならない違和感に丁寧に耳を傾けていきます。そして、その症状をイメージとして扱い、そのイメージと対話をしながら、その症状が始まった最初の体験へと遡っていきます。

 すると、その違和感の奥に、過去に置き去りにされていた未完了の体験――たとえば、孤独の中で必死に耐えていた子ども時代の自分や、助けを求めることを諦めていた過去の自分の存在に触れていくことがあります。そして、それらの体験を「いま・ここ」にいるクライエント自身が、セラピストの手伝いを受けながら見つめなおして、新しい視点と共に本当はこうしたかったという願望を達成させていきます。この未完了の体験(願望)を、完了させることで、身体に染みついた緊張や不安の反応を初めて手放していくことができるのです。

 ホログラフィートークでは、症状を「敵」として排除するのではなく、むしろ「大切なメッセージ」として受け止め、その症状が何を訴えていたのかを一緒に読み解いていきます。パニック発作もまた、その人の神経系が限界を知らせ、自分を守ろうとしてくれた“賢い反応”であり、その背後には、癒されることを待っている過去の記憶や、伝えたかったけれど伝えられなかった想いが潜んでいることが多いのです。

 パニック症の根底にあるトラウマのプロセスに光を当て、その人の人生の文脈の中で丁寧に扱っていくことで、単なる「症状の克服」ではなく、「より深く、自分らしく生きること」への回復の道が開けていきます。

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