パニック症の克服 心理治療
(2)パニック症の克服①
【パニック症の心理治療】
パニック発作の治療に一番効果的な治療は、暴露療法と呼ばれる心理治療です。暴露療法という治療は、広く言うと行動療法と呼ばれる心理療法の仕組みの治療ですが、簡単に言うと、怖いと思っていて避けていることを、避けないでやってみて、大丈夫だということに慣らしていくという治療法です。高所恐怖症や、犬が怖いなど、いわゆる恐怖症の治療として、最も効果が高く、かつ古くからある治療法の一つです。
この治療法は様々な不安感を伴う出来事への治療法として広く使われていますし、PTSDの治療でその効果を最も早く実証した持続エクスポージャー法という心理治療も、この暴露療法(エクスポージャーとは暴露という意味です)の一つです。
本来、安全であること(電車に乗る、高速道路やトンネルを車で走る、映画館で映画を見る、美容室に行く等)に対して、怖いと思い込んでしまったところを、安全にそれを行えることを繰り返し体験することで、大丈夫だという経験として再学習してもらう仕組みです。
その詳しいやり方については、心理療法のところでまた伝えますが、基本的に自分が避けていたことを、リストアップして、その中で、これくらいの怖さなら耐えられそうだということから始めてもらい、それが怖くなく出来るという体験を何度も繰り返してもらう事を行います。
避けていた行動を変える仕組みにくわえて、今まで安全だと思っていたことが、怖いと思い込むようになった、その考え方(認知といいます)の癖についての修正も併せて行います。
この身体が苦しく感じているこのことは、本当に発作の前兆なのか?
ただ疲れていても、こういった感覚は出てくるし、ただ心配していても、体の違和感はでてくるはずだし、本当に発作だと思うか?
発作が起きたら、どうなると思っているのか、生活できなくなるようなとんでもない事が起こるのか?
発作あっても、少し休んだら楽になるのではないのか?
人が大勢いるところで発作を起こしたら、社会的に致命的なことになるのか?本当に、周りの人達に迷惑をかけ嫌がられるのか?
誰もたすけてくれないのか?
等、自分の中で不安を拡大解釈していることについて、冷静に考えを整理してみて、妥当な考え方に修正するというやり方です。これは考え方を扱うので認知療法とも呼ばれています。
また、体に不安感を感じると、その体の事ばかり意識するようになります。丁度乗り物酔いしやすい人が、食事を食べたあと、バスに乗る時に、大丈夫かとずっとおなかの調子だけ意識するのも、同じです。
しかし、このように不安から自分の身体の症状ばかりを意識すると、大抵は具合がさらに悪くなっていきます。乗り物酔いをしないためには、体のこと気にするよりも、友達と楽しい話をして、それに夢中になっていると、体の不調を全く感じないで、目的地までたどり着けることを経験する人もいるでしょう。
つまり、注意の切り替えをしてみる。体の不調に意識を向けるよりも、別のことに意識を向ける、注意の転換をすることも大切です。こういった治療は注意転換トレーニング:ATTと呼ばれています。
こういった、治療の仕組み(これらの治療の仕組みを認知・行動療法と呼んでいます)が、パニック症の治療には一番有効であることが分かっています。
