ホログラフィートークの四つの構造
ホログラフィートークは、ボディーワーカーでもある臨床心理士の嶺輝子先生が開発された、速やかにクライエントの抱えた問題を解決していく最新のトラウマ焦点化心理治療の一つです。それには次の四つの構造があります。
ホログラフィートークの構造①
【感覚の記憶から、過去にさかのぼる】
クライエントが今抱えている体の症状や、その困った問題を意識したときに感じる体の感覚をターゲットとします。
その上司にアツをかけられていることをおもいだすと、体のどこに、どんな感じが出てきますか?とその問題を活性化させたときに出てくる体の反応に着目し、それを意識してもらいます。
そしてその意識した感覚を、それに色や形がついていたらどんなふうに見えるか、あたかもそれが一つの独立したエネルギーのようにしてみてもらいます。(*1)
そしてそのエネルギーと対話をしながら、それが自分の中にやってきた最初の場面にさかのぼっていくことをします。
(*1)感覚の記憶という見えないものをクライエントが扱えるようにしているのです。感覚の記憶は、クライエントの脳の中で起きていた、ある状況で生まれてくる神経系の反応パターンです。
その反応パターンが、いつから起きてきたのかという情報にアクセスすることができれば、その原因の起源にさかのぼることができます。
この症状と関連した過去の身体感覚の記憶は、その人が意識していない、もしくは意識していても解決済みだと本人は自覚しているような体験が多いため、顕在意識でさかのぼるのは大変です。その起源を考えてもらうのではなく、体の情報にアクセスしてもらうことで原因が自然と見えてきます。
『考えるな!感じろ!』 ブルース・リーがよく言っていたセリフです ^^
無意識の情報にアクセスする工夫がホログラフィートークの中には沢山ちりばめられています。
通常のトークセラピーですと、問題の起源となっている無意識にある情報にクライエントが気付けてセラピストと共有するまで、1年、2年とかかることもしばしばですが、ホログラフィートークでは初回のセッションの際に、そこにさかのぼることを容易にしています。
ホログラフィートークが効率的にすすむのは、ここに秘密があります。
私たちの体が生まれながらに備えている、無意識につながることができる力を活用すると、なにから始めてよいか分らなくなるような難しいトラウマの治療に、回復へと向かう一縷の光、道がみえてくるのです。
ホログラフィートークの構造②
【過去の問題点をクライエント自ら解決する】
過去の体験にさかのぼり、当時は解決方法がなかったり、誰も味方がいなくて諦めるしかなかった過去の自分自身に対して、今の自分自身が相談にのり、助けていきます。
また当時自分のせいだと思っていたようなことであっても、その本当の原因がどこにあるのか見極めて、本当の責任者にその問題を返していきます。
例えば上司に嫌と言えない気持ちをさかのぼっていくと、小学生のころの勉強ができなくて父親に酷く叱られていた場面が出てきたのであれば、その小学生の自分に望みは何かを尋ねます。
父に自分が一所懸命やったことを分かってもらいたかったとの望みなら、今の自分から当時の父に伝えて、父を諭します。
人との雑談が苦手な気持ちでさかのぼると、クラスの中でなかなか友達ができずにしり込みしていた中学生の自分が出てくるかもしれません。その時も当時の自分に何が望みだったかを尋ねます。
その望みを阻んでいた当時の様々な問題はどこにあるのか?
クラスで浮いてしまって本人が困っていることに誰も気づかなかったのか?
担任の先生は引っ込み思案のこの子に対してどんな手助けをしてくれたのか?
当時の親は子供が新しい環境になじめずに苦しんでいたことを知っていたのか?
手助けをしてあげていたのか?
何が起きていたのか?そして何が起きていなかったのか?
そのことを冷静に見つめて、問題の解決を図ります。
このように過去にさかのぼり、冷静に当時の問題の可決を図ります。
そして大切なことですが、これをクライエント自身にしてもらいます。
セラピストはクライエントに問題の本質に気づけるようサポートしながら、今のクライエント自身に過去の自分を救い、問題解決をしてもらいます。
この自分の力で問題を今解決できているという効力感が、ホログラフィートークのとても強い効果の理由の一つです。
ホログラフィートークの構造③
【過去で止まったままになっていたクライエントの願望を達成させる】
問題解決を終えたら、その時本当に望んでいたことは何か?
叶えられぬままで止まったままとなっているクライエントの時間が再び動いてきます。
希望に満ちた、叶えたかった未完の未来へと向かって動いていくのです。
父親にわかってもらいたかった、努力をほめてもらいたかった。
その思いが成就していくよう問題がどこにあったのか、それを明らかにします。
問題解決を今のクライエントが出来るよう、セラピストはその手助けをします。
本当に望んでいたことが叶えられると、とても安心した感覚が生まれます。
クライエント自身が興味をもっていたこと、楽しみたかったことが出てきます。
『家族で旅行に行きたい』
『遊びに連れて行ってもらいたい』
『友達と一緒にあそびに行きたい』等々。
その願いを満足するまでイメージの中で修正体験してもらいます。
当時は叶えられぬまま止まった時間を、本当に望んでいた形へつなげていくのです。
この体験によって、その当時の感情反応がきちんとリセットされていくのです(*2)
(*2)強い感情反応は、それが安全に表現されることでリセットされていきます。
未完の体験をしっかりと完了させること。これはSEなどでも重要視されています。
トラウマ治療の父ともいえるフランスの心理学者ピエール・ジャネは、このプロセスによってトラウマから解放されていくことを100年前に発見しています。