怒りについて
心理治療をしていると、深い心の傷を抱えた方々に多く出会います。トラウマ被害にあった方は、その出来事のなかで、自分がしたこと、しなかったことについて、自分を責め続けることがしばしば長期に続いています。
加害者に対しての怒りは、その相手が脅威であればあるだけ、怒りが出てくる人は少なく、自分を責めるところで意識を止めている方が多くなります。しかし治療が進んでいき、自分のせいではないことを感じだすと、相手に対する強い怒りが生まれてきます。
虐めた相手、パワハラした上司、DVをしたパートナー、また不適切な養育を繰り返してきた親に対しても。
怒りがうまれることは、治療が進み、やっと自分のことを守れるようになった反応ですので、それはとても良い傾向なのですが、その怒りにずっと捕らわれ続け、結果として治療が全く止まってしまう場合も起こります。
どのようにしたら、この怒りの壁を越えて、心理セッションをさらに先に進め、クライエントが自分の人生をみつめて、自分はOKなんだと感じられていけるか。それはクライエントにとっても、セラピストにとってもチャレンジです。
怒りのマネージメントについて、自分が実践の中で考えながらクライエントに伝えてきたことや、自分が学んできた心理技法(ここではSTAIR(*)のモジュールを一部紹介します)から、効果的だと思えるものを紹介します。
(*)STAIR ニューヨーク大学のマリリン・クロイター博士によって開発された、複雑性PTSDの治療技法です。トラウマ的出来事を思い出して語るナラティブな治療の前に、感情調整スキルや対人関係スキルを身に着けてもらうため、弁証法的行動療法や対人関係療法のモジュールを取り込む形で作られた回数限定の心理治療です。感情調整スキルの開発のところで、三つのチャンネルというモジュールがあります。その技法をここでは一部紹介しています。